鉄鋼業界を志望するにあたり購入した書籍
”世界一になるつもりで徹底して勉強することだ.学者と議論しても負けないほど勉強を重ねる.自動車業界に身を置いていれば,「自動車」と名のつく本はすべて買うぐらいの覚悟が必要だ”
伊藤忠商事会長 丹羽宇一郎 【PRESIDENT 2009.4.13 本物のリーダーへの道】
鉄鋼業界を志望するにあたって,工場見学などで良い質問をするため,また自分のモチベーションを高く維持するために購入した書籍.私の専攻は化学工学.化学工学とも関連が深い上工程,特に製銑工程に関する章に的を絞って集中的に読んだ.あと,工場見学で見学する可能性の高い転炉と熱延工程も.
よくわかる鉄鋼業界 (業界の最新常識)
メーカーとしての鉄鋼会社のサプライチェーンの概要がよくわかる.買鉱の安定確保,精錬工程,鉄鋼製品の種類,流通,マーケット,鋼材価格決定,コスト構造,財務体質(D/Eレシオ,発行株式数) ,研究開発費,日本鉄鋼業の強み(設備・補修技術,高機能財)など就活には大事な情報がまとめられている.国内高炉(JFE統合後),電炉各社の概要と沿革,海外主要鉄鋼メーカーの概要は少し古いが(ミタルによるアルセロール買収(2006,7)は記述されているが,タタのコーラスグループ買収(2007,10)の情報は載っていない)役立った.「日刊鉄鋼新聞」の社長の一柳正紀さんが書いているので,おそらく間違いは無い.
一柳正紀
日本実業出版社
- 第1章 鉄鋼業界はいま
- 第2章 鉄鋼業界のしくみ
- 第3章 ライバルは海外に
- 第4章 未来技術が鉄を変える
- 第5章 鉄鋼メーカーの横顔
- 第6章 主要各社のプロフィール
- 第7章 激動の鉄鋼業界史
- 第1章 差し迫る鉄鋼業界の課題
カラー図解 鉄と鉄鋼がわかる本
フルカラーでとてもキャッチーなつくりの非常にわかりやすい本.しかし.がっつり読もうとすると,たくさん調べないといけないことが出てくるくらいにはボリュームはある.各種鉄鋼製品,製銑(主に高炉),製鋼(転炉,二次精錬,連鋳),圧延がメイン.後,強化法とめっきが少々.面接や工場見学に行く前の新幹線での移動中や,リクルータの方と会う前には,ひたすらこれを読み続けた.とりあえずカラーの図が目に飛び込んでくるので印象に残りやすいので,とっさの質問もしやすかった.なによりこの本を頭に入れると入れないのでは,工場見学の意味がまったく違ってくる(京大の加納先生のブログでも書かれていた).一つ残念なことは,インターン後にこの本を買ったことだ.
<VISUAL ENGINEERING>カラー図解 鉄と鉄鋼がわかる本
- 作者:新日鉄住金株式会社
- 発売日: 2004/11/09
- メディア: 単行本
新日鉄住金(株)
奥野嘉雄, 松宮徹, 菊間敏夫, 百合岡信孝, 山崎一正, 宮坂昭博 監修
日本実業出版社
- 第1章 鉄の生い立ちと,鉄鋼製品ができるまで
- 第2章 鉄鉱石から鉄を生み出す
- 第3章 鋼を生み出す
- 第4章 形を造り込む
- 第5章 鉄と鉄をつなぐ
- 第6章 柔らかくて強い,そして錆びない鉄を!
- 第7章 鉄に願いを
高炉製銑法―高炉のたゆまざる発展の系譜 (叢書 鉄鋼技術の流れ―第1シリーズ)
化学工学において分類するところの気・固・液・粉4相系の向流型反応移動層である,高炉にスポットをあてるために購入したのが,この本と次の本.「発展の系譜」と銘打っているだけあって高炉の研究者とその系譜および理論,論文などの歴史が追えるようになっていた.T. L. Joseph 先生,城正俊 先生,館充 先生,鞭巌 先生,八木順一郎 先生などの諸先生方が頻繁に登場する.1章,5章が高炉の機能と実際の操業について,3章が高炉内現象のモデル化とシミュレーションの現状について書かれており,何度も読み返した.7章の「わが国における製銑技術の歴史と今後の課題」は筆者の学振54委員会創立50周年の記念講演記録だが,読み物としても非常に面白かった.ここで,初めて旧漢字の「鐵」が「金(属)の王なる哉」と本多光太郎 先生(鉄の神様,鉄鋼の父 と言われている)により評されたことを知った.
高炉製銑法―高炉のたゆまざる発展の系譜 (叢書 鉄鋼技術の流れ―第1シリーズ)posted with amazlet at 11.06.05
- 1 高炉の基本的機能
- 2 高炉の通気性
- 3 高炉プロセス理論の変遷と現況
- 4 レースウェイ ー認識の変遷と現況ー
- 5 Si移行反応理論の変遷
- 6 中心流操業思想の歴史と現況
- 7 わが国における製銑技術の歴史と今後の課題
- 資料1 八木順一郎, 鞭巌, 高炉の高圧操業
- 資料2 山岡秀行, 充填層内における微粉を伴った気体の2次元流動特性
- 資料3 徳田正則, 槌谷暢男, 大谷正康, 高炉内のSi移行反応に関する熱力学的考察
鉄鋼製錬 (金属化学入門シリーズ (2))
完全に教科書.高炉設備・高炉操業については,高炉の操作変数やプロセス変数の値が載っていて,具体的にイメージしやすかった(羽口速度が220-280m/sというのに一番驚いた).実際に,工場見学の質問では全く使わなかったが,製銑の化学(酸化物の標準自由エネルギー,エリンガム図,炉内反応,ブドワー平衡など),高炉の炉内状況(熱保存帯,化学保存帯)は家にいるときに時間を見つけては勉強した.
- 1 序論
- 2 高炉製銑法
- 2.1 高炉製銑法の概要
- 2.2 原料
- 2.3 高炉設備
- 2.4 高炉操業
- 2.5 製銑の化学
- 2.6 高炉の炉内状況
- 3 製鋼法
- 3.1 製鋼法の概要
- 3.2 製鋼法の原理
- 3.3 転炉製鋼法
- 3.4 電気炉製鋼法
- 3.5 平炉製鋼法
- 4 造塊法
- 4.1 概要
- 4.2 脱酸
- 4.3 凝固と偏析
- 4.4 造塊法
- 4.5 連続鋳造
- 5 炉外精錬法
- 5.1 量産鋼の炉外精錬
- 5.2 溶銑予備処理
- 5.3 二次精錬
- 5.4 取鍋精錬の化学
- 6 特殊な製鉄法
- 6.1 高炉によらざる製鉄法
- 6.2 特殊溶解法
高炉を支えた操業技術と原燃料
買ってはみたものの,非常に学術的かつ,実際のプロセスにあてはめた現実的な本.当時の製銑研究者たちが解決してきた問題とその解決法および,この著者の研究成果が載っている.製銑工程において非常に大事な焼結鉱とコークスについて深く知ろうと想い購入したが,その部分はほとんど読まなかった.2章を主に読んだ.ちょっと難しかった.
- 1 緒言: 高炉プロセスとは?
- 2 高炉操業に関する技術の評価
- 3 原料(焼結鉱)に関する性状,製造技術の評価
- 4 燃料(コークス)に関する性状,製造技術の評価
- 5 今後の高炉プロセスの技術革新とは?
講座・現代の金属学製錬編 〈第3巻〉 製錬工学
前半は,反応工学,物質移動工学,伝熱工学の基礎.後半は装置の数値解析モデルと解析条件が載っている.これを参考に,解析モデルを組み立ててみましょうという,金属製錬の装置のシミュレーション研究の教科書.化学工学を学んでいる者としては,なじみ深い内容だった.しかし,就活に関して「これは何か違う」思い,ほとんど読んでいない.
講座・現代の金属学製錬編 〈第3巻〉 製錬工学posted at 10.04.18
- 1 序論
- 2 反応工学および移動速度論の基礎
- 2.1 反応工学の基礎 ー物質移動と不均一反応速度ー
- 2.2 移動速度論の基礎
- 2.3 反応装置の設計
- 3 熱工学の基礎
- 3.1 熱の発生
- 3.2 燃料とその燃焼
- 3.3 伝熱
- 4 精錬装置解析
- 4.1 精錬装置における伝熱
- 4.2 充填層におけるガス流れと伝熱
- 4.3 鉄鋼一貫製鉄所のエネルギー使用特性
- 4.4 鉄鋼精錬用装置の解析
- 4.5 鉄鋼精錬用装置の解析